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「そうですか。では試験官を呼んできますので少々お待ちください」
「わかりました」
先輩と呼ばれていた受付嬢は受付の仕事を後輩に任せるとどこかへ行ってしまった。
「あ、あのぉ」
「何ですか?後輩さん」
「そういう名前じゃないんですけど……まぁいいです。え~とですね。書類に名前を書いていただきたいんですけどぉ」
後輩さんはそう告げるとカウンターの下から一枚の書類を出した。
「これにサインすれば?」
「そうなりますぅ」
青年の書いた書類にはこう記されていた。
名前、ヴィンセント。
性別、男。
種族、人間。
属性、不明。
得意武器、不明。
使役魔、なし。
以上。見る限り最低限のことしか書かないとてもシンプルなのものだった。
「え~と、ヴィンセントさんでいいんですかぁ?」
「それで構わない。ところで見たところ君は俺と同じくらいの年のように見えるのだが」
「わたしはエルフなんですぅ。だから年齢よりも幼く見えるんですよぉ」
「ははっは、面白いな。それに世の女性たちはとても羨ましがるんじゃないのか」
「すみません、準備が整いましたので闘技場の方へ」
先ほどの先輩が少し息を乱しながら、ヴィンセントにそれを伝えた。
「大丈夫ですか?何だかとてもお疲れのようですが…」
先輩受付嬢は少しぐったりとした様子で椅子に凭れ掛かっていた。
「先輩の代わりにわたしが案内しますぅ」
「よろしく頼む」
「では、行きましょうかぁ」
このエルフの受付嬢と話をしているとどこかおっとりとしていてそちらのペースに持っていかれそうになるがそれも彼女の魅力なのかもしれない。
闘技場へ向かう通路でヴィンセントはそんなことを考え苦笑する。
長い通路を抜けるとそこには青空が広がっていた。
「ようこそ、天空闘技場ガイアスへ」
「天空闘技場か……それでこんなにも気圧が低いのか。若干ではあるけれど酸素も少ないような気もする」
「ほう。一瞬でそこまでわかるとは大したものだ」
屈強そうな男は実に楽しそうに腕を組んだまま豪快に笑った。
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