1102人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
車内が沈黙に包まれた。
…この辺で、止めておいた方がいい。
…何も知らないわたしなんかが、余計なこと、言わない方が…。
「白井さん…。ちゃんと誰かに、甘えたほうがいいよ…」
目を伏せていた白井さんが、顔を上げる。
「レナさんとか、お父さんとかお母さんとか、友達とか、誰でもいいから。
そうやって傷ついた時、ちゃんと誰かに甘えて慰めてもらわなきゃ、ダメだよ。
誰にも本当の気持ち言わずに一人でガマンしてたら、……白井さん、かわいそう」
「……」
白井さんは、黙ってわたしの顔を見つめていた。
――わたしってホント、懲りない……。また余計なこと言っちゃった。
自己嫌悪に陥り、わたしはため息をついた。
「ごめんなさい。わたし、生意気なことばっかり言って……」
蚊の鳴くような声で言うと、白井さんは黙ったまま、自分のシートベルトをカチャリ、と外した。
するする、とベルトが収納口に吸い込まれて行く。
最初のコメントを投稿しよう!