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「勝ったの理沙さんだったんだね」
「ああ…うん」
コウは私の言葉に驚いた顔をした。
きっと理沙さんの名前が出るとは思ってなかったのだろう。
でもコウは動揺することなく素直に頷いてくれた。
「私、名前聞いてビックリしちゃった」
「そっか」
「理沙さんってやっぱり凄い人だなって思ったけど、でもすごく悔しかった」
「ミウ?」
「本当に悔しいのはコウなのにね」
そう。本当に悔しいのはコウだ。
あんなにがんばっていたんだから負けて悔しいはずだ。
でもあの時のコウを思い出すと自分の事のように悔しくなってくる。
「…ミウ」
「だから悔しくて悔しくて気がついたら倒れそうになったの。高科さんは私を支えてくれただけ」
「そっか」
コウはそう言うと優しく微笑み、私の頭を優しく撫でた。
その瞳は真っすぐ私を見てて、頭を撫でる手は優しくて。
まるで親が子供を安心させるかのように。
「わかったよ」って気持ちが伝わってくる。
…良かった。
ちゃんとわかってくれた。
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