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「なぁミウ」
コウは私の頭を撫でながら名前を呼んだ。
私はその呼ぶ声に顔を上げコウを見るとふっと頭から手の気配が無くなった。
と同時にコウはいきなり私を抱きあげると隣に私を座らせた。
「え…何?」
私は一瞬何が起きたのかわからなかった。
さっきまでコウの目の前に立っていたのに今はソファに座っている。
するとコウは宙を見ながら話し出した。
「この前のプレゼンはもう気にしてねえよ」
その顔はもう吹っ切れているような感じで本当に気にしていないのがよくわかる。
でもわざわざそれを言うのはきっと私が悔しいと言ったのを気にしているのだろう。
「…」
私は何も言えず、ただ聞く事しかできなかった。
コウは私の返事を待つことなくそのまま話し続ける。
「確かにあいつに負けたのは悔しかった。特に今回のプレゼンはチャンスだったからどうしても勝ちたかった」
「…」
「でもこれで終わりだとは思ってないし、またチャンスは巡ってくる」
「…うん」
「ミウ、ありがとうな。おまえがいれば頑張れる」
「…コ…ウ」
『おまえがいれば頑張れる』
私はコウの言葉が嬉しくて思わず声が上擦ってしまった。
コウはそんな私を見ながら微笑むと視線を外して少し恥ずかしそうに言った。
「だから…さっきみたいにもう一度おまえからキスをして。ミウを感じさせて」
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