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「そうね。わからないわね。でもあなたがいる限り彼がアメリカに行くとは絶対に言わないわ」
「絶対って…結婚しているから?」
「確かに結婚しているのもあるけど、それだけじゃないわ。だってあなたは彼にとって特別な存在だから」
「特別って…?」
結婚している以外に何があるっていうの?
コウにとって特別な存在って…。
「初恋の人」
「…初恋?」
「そう。長年の記憶で形成されているから身寄りのない彼には他の誰よりも美化された超越した存在なの」
超越した存在?コウの?
そんな風に考えたことない。だっていつものコウを見ているとそう感じないから。
私は言い返したかったけど、理沙さんの強い瞳を顔を見ていると何も言い返せなかった。
理沙さんは何も言えない私を余所に話しを止めない。
「あなたってズルイわ。彼はあなただったらどんな事でも受け入れられる。それが結婚でも。だから余程の事がない限りいくら夢が叶うとしてもアメリカには行かない」
その言い方は嫌味が込められてて。
その瞳は挑発しているようで。
何よりも『どんな事でも受け入れられる。それが結婚でも』という言葉が心に引っかかった。
まるでコウが私を好きだからでなく初恋の人だから結婚したみたいに聞こえる。
「どういう事?」
私は真っすぐ理沙さんを見つめながら言った。
でも理沙さんは私の質問には答えない。
それどころか逆に私に聞いてきた。
「私、あなたに聞きたい事があるの」
「何?」
「あなた達、本当に夫婦?」
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