1203人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「結婚した理由?」
私はそう言うと困惑した表情をした。
コウが私と結婚した理由。
確か結婚する時に仕事の為って言ってた。
ボスがうるさいって。
それじゃないの?
理沙さんは何を知ってるの?
すると理沙さんはコーヒーを飲みカップを置くとゆっくりと私を見た。
「私が独立した時の事は聞いてる?」
「…何も」
そう言うと私は首を振った。
コウからは何も聞いてない。
独立どころか理沙さんについては何も話してくれない。
理沙さんはそんな私を見ながら「やっぱりね」と呟いた。
「まぁ彼は私の事は話さないわね。私が独立したのは彼との夢を叶える為だったのよ。だからもちろん彼も一緒に退職するはずだったのに前の会社が反対してね。きっと彼が持っている顧客を取られるのが嫌だったと思うの」
「あ…」
その瞬間、納涼会での田中さんとの話を思い出した。
確かに結婚の話が出る直前にパートナーの独立があってコウを連れて行くとかモメてたって。
そのパートナーは理沙さんで。
理沙さんはコウとの夢を叶えるために独立しようとした。
たぶん仕事だけではなくて生涯のパートナーにしたかったんだ。
でも会社は顧客を取られる事を恐れてコウを連れていく事に反対した。
すると理沙さんは悔しそうな顔をしながら言った。
「でも私は顧客なんかどうでもいい。ただ彼と独立して一緒にやっていきたかっただけなのに、会社はわかってくれなくてね。彼を連れていくのなら妨害すると言われたのよ」
最初のコメントを投稿しよう!