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「これでわかったでしょ?彼は偽装結婚したのよ。あなたという初恋の人を使って」
理沙さんは私を気の毒そうに見ると優しく言った。
その言い方はさっきまでの勢いはなくて。
まるで母親が子供を諭すように優しい言い方だった。
「…」
私はそんな理沙さんに何も言い返せない。
否定したくてもできない。
理沙さんは私が認めたと思ったらしく、そのまま優しい口調で話し続けた。
「もうそんな結婚、継続する事ないのよ」
「え…?」
「だって私の会社も軌道に乗ったし、海外での仕事も手に入れたから」
「…コウの夢」
「そう。だけど彼は簡単にあなたから離れる事は出来ない。結婚した責任があるし、初恋の人であるあなたを悲しませたくないから」
「…」
「そこであなたにお願いしたいのよ。申し訳ないけど、彼の将来の事を考えて欲しいの。もちろんあなたの生活が困らないように当面の約束するわ」
生活が困らないようにするって…。
それって…。
「別れろって事ですか?」
私は声を振り絞りながら言った。
…そうだ。
理沙さんの狙いはそこなんだ。
ただアメリカに連れて行くのではなくて、公私のパートナーとしてコウを迎えたいんだ。
だからこの結婚が邪魔なんだ。
「そうね。そう言う事になるかしら」
理沙さんはそう言うと「ふふっ」と笑った。
そしてとどめを刺すかのように勝ち誇った顔をしながら言った。
「だから彼を…孝を私に返して」
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