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「じゃあ行ってくる」
コウは荷物を持つと玄関に向かった。
私はコウを玄関で見送ろうと思い、一緒について行く。
いつもは私の方が先に家を出るが今日はコウの方が先だ。
飛行機の時間、空港までの所要時間を考えるともう家を出ないと間に合わない。
だからコウが先に出るのは当然なんだけど、なんか不思議。
私が見送るなんて珍しいもんね。
でも奥さんが旦那さんを見送るってこんな感じかなぁ。
うん。たまにはいいかも。
玄関では靴を履いているコウの後ろに立つとぼんやりと見つめていた。
スーツ姿のコウは見慣れているはずなんだけど、この綺麗な顔でパリッとスーツを着こなした姿は何度見ても飽きない。
見る度に「やっぱりカッコいいなぁコウは」と思ってしまう。
だから今日もいつものようにそう思うはずなんだけど…。
何故か別の感情が私を支配しようとしていた。
…なんだろう?
コウは沖縄に出張に行くだけなのに。
帰ってくるのに。
どうしてだろう?胸がざわざわする。
じわじわ不安が湧いて、その不安が心を真っ暗闇にしようとする。
まるでこれが最後になるような。
もうコウに会えなくなるような。
…ってそんなの嫌!!
「…コウっ!」
私は助けを求めるようにコウの名前を呼んでしまった。
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