1204人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ん?」
コウは返事をすると振り返り不思議そうに私を見た。
たぶん突然呼ばれて驚いているのだろう。
「…なんでもない」
その顔を見ていると不安だなんて言えない。
でもコウは私の表情でわかってしまったのか「ふっ」と笑うと悪戯の顔をした。
「昨夜のじゃ物足りなかった?」
その瞬間、頭に昨夜の夜の事が過った。
甘く激しく抱かれた事を。
物足りないなんて…。
「そ、そんな事な…んっ」
コウは私が言い終える前に唇を塞いできた。
私は突然のキスにビクッとなり目を丸くしてしまう。
そんな私を見ながらコウは「ふふっ」と笑い、唇を耳下に移すと首筋を強く吸ってきた。
それは少し痛かったけど…コウの唇の感触が嬉しい。
「俺のしるし、ミウにつけておく」
「…コウ」
コウは優しく微笑むとゆっくりと私の耳元に唇を寄せて甘く囁いた。
「できるだけ毎日電話するよ」
コウの甘い声は私の身体を温かくする。
大丈夫だよって安心させようとしてくれる。
それなのに私一人が不安になってコウを困らせようとしている。
仕事の邪魔をしようとしている。
…それは嫌。
コウは夢の為に仕事がんばっているんだから私だって応援しないと。
こうして今、私だけを真っすぐ見つめてくれる優しい瞳に。
だから私はとびきりの笑顔で言った。
「うん。待ってるね」
でも不安を消し去る事は出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!