1204人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
コウが出張に行って1週間。
この頃は不安な気持ちも忘れていて、いつも通りの生活ができていた。
コウがいなくて寂しいって気持ちもあるけど、毎日のように電話をしてくれるから。
仕事が忙しいのに気を使ってくれるから。
私はコウの声が聞ければそれだけで十分だった。
だから出張が伸びたと聞いてもそれほどショックは受けなかった。
「久しぶりですね。飲みに行くの」
終業時間を迎えると華ちゃんは私の下に嬉しそうな顔をしながら来た。
そしてコソコソと小さい声で言う。
コートに鞄を持っていてもう帰る準備は出来ているみたいだ。
私は「そうだね」と言うと慌てて帰る支度をした。
今日は久しぶりに華ちゃんと飲みに行く約束をしていた。
いつもランチは一緒にいるのだが、飲みに行くのは久しぶりだ。
コウのプレゼンが終わってから仕事が落ち着いて早く帰る事が多かったし、沖縄に出張しても毎晩電話をくれるから予定を入れないようにしていた。
華ちゃんには申し訳ないけどコウと一緒にいたいから。
声を聞きたいから。コウを優先していた。
でも今日はプロジェクト内での飲み会があるから帰りが遅くなると言われていた。
なんでも向こうで有名な郷土料理の店に行くとか。
沖縄料理なんてそうは食べれないからいいなぁと言ったらコウはそれほど興味がないらしい。
ゴーヤチャンプルが苦手だからって笑ってた。
そんな子供のような事を言うコウが可愛いと思いつつも、飲みに行く事を思うと仕事が充実しているんだなぁと自分の事のように嬉しかった。
だからどんなに遅くなっても電話をするというコウに私は「たまには楽しんできなよ。電話もしなくて大丈夫だよ」と言った。
そりゃあ声聞きたいけど、たまには会社の人と飲みに行くのもいいと思ったし。
また明日電話してくれればそれだけでいい。
その時にゴーヤチャンプルの感想を聞かせてくれればいい。
今日ぐらい声を聞かなくたっても大丈夫。
コウからの毎日の電話はそれだけ私を寂しい気持ちから解放していた。
最初のコメントを投稿しよう!