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「やり合った?」
俺はそう言うと田中を見た。
田中は視線を理沙に向けたまま、やれやれと呆れた顔をしている。
「俺も理由はわからないけど、今日限りで退職だって」
今日限りで退職?
俺は田中の言葉に驚いた。
「今日って急すぎないか?」
まだ退職の日まで日数がある。
それなのに今日で辞めるってどういう事だ?
俺は何が起きたのかわからなかった。
「相当やり合ったんだろうな。なんでも辞めてやると啖呵を切ってきたらしい。女王様らしいな」
田中はそう言うと「ははは」と笑った。
辞めると啖呵を切る位にやり合うとは。
まぁアイツの事だからわかる気もするけど、凄いな。
…なるほど。
どうりで機嫌が悪いはずだ。
上層部とやり合った理由はわからない。
でもこれが機嫌の理由なんだと納得した。
だから俺の話どころではなかったのだろう。
まぁその方が俺的には楽だ。
どういう状況であれアイツを切る事ができたんだから。
でも今日で退職するって…。
「仕事は?引き継ぎも終わってないだろ?」
そう。まだ引き継ぎは完全に終わっていない。
きっと資料を作成していると思うが、説明を受けないと困る奴もいるはずだ。
すると田中はニコッと微笑むと俺を見た。
「彼女にはそんなの関係ないんじゃない?まっこれからは頼みますよ。リーダー」
田中はそう言うと俺の肩をポンと叩き自席へ戻って行った。
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