結婚のお誘い

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終業後、俺達は会社近くのスタンドバーに行った。 ここは立ち飲みの店だが料理が旨いと評判の店で、OLとかサラリーマンでいつでも混雑している。 週末となれば予約が必要なくらいだ。 幸い今日は平日であるのと会社が近いせいか早い時間に出れば並ぶ必要もない。 それでも店は混雑していてなんとか最後の一席を取る事ができた。 「まっとりあえずリーダー昇格おめでとう」 田中はグラスを片手に俺を見ながら言った。 「あまり嬉しくないな」 俺は「はぁ」と溜息をつくと呆れたように言った。 祝福されるのは嬉しいが、俺は今後の忙しさを考えると先が思いやられる。 だから正直言ってサブリーダーの方がマシだと思っている。 「そう言うな。俺は嬉しいよ」 「僕もですよ」 高科は懐っこい笑顔で言うとグラスを高く上げた。 それに合わせるように俺達もグラスを上げる。 「乾杯」 俺は乾杯と同時にビールを喉に流し込んだ。 冷たいビールが喉を通る爽快感と口に残るアルコールが心地いい。 仕事の疲れも取れていくようだ。 アルコールの余韻に浸っていると、高科は思い出したように田中に言った。 「そういえば今月でしたよね?結婚式って」 「あはは。まぁそうなんだよな」 高科の言葉に田中は嬉しそうな顔をした。 田中は今月結婚式を挙げる。 今は準備で忙しくて週末も休んでいられないらしい。 でもそれも楽しいって言ってたよな。 「結婚直前ってマリッジブルーとかないんですか?」 「マリッジブルー?そんなのないよ。結婚できる事が嬉しいからな。おまえも早くいい人見つけた方がいいぞ」 田中は俺に得意げな顔をしながら言った。 きっと高科はまだ若いから言っても言い返されるのがわかっているのだろう。 それに比べて俺はこんな性格だし、一生結婚できないと思っているな。 …コイツ、いつも馬鹿にしやがって。 そんな田中にイラッとした俺はミウと結婚する事を言う事にした。
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