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「んなわけないだろ」
俺は高科の言葉に考える間もなく即返答した。
理沙と結婚って…そんなわけないだろ。
冗談じゃない。
アイツから逃げたいんだよ。
「えっ?違うの?」
田中は意外そうな顔をしながら言った。
俺は何か言ってやろうと思ったが、高科は質問を止めなかった。
「じゃあ誰ですか?」
その顔は真剣で適当に答えではダメだと思った。
だから素直に言うことにした。
「おまえの知らない人だよ。俺の幼馴染」
すると高科は「そうなんだ」と呟くと下を向いた。
その顔は口元が緩んでいてどこか嬉しそうだ。
高科はやっぱり理沙の事を…。
そんな高科を見ながらホッとしていると横から田中の声が聞こえてきた。
「幼馴染っておまえいつの間に彼女作ってたんだよ」
その顔はニヤニヤしていて俺から色々と聞き出そうしているのがわかった。
たぶん会社で俺の話はあまりしないからここぞとばかりに聞きたいのだろう。
でもコイツにはあまり話したくない。
「別にいいだろ」
俺は吐き捨てるように言った。
そんな俺に田中は「やれやれ」と言うと呆れた顔をした。
「まっいいけどさ。で、いつ式挙げるんだよ」
「まだ具体的には決めてない」
「なんだそれ?」
田中は意味が分からないと言わんばかりに不思議そうな顔をしていた。
そりゃあそうだろう。
結婚するといいながら具体的な詳細は決まってないって。
でも本当なんだよな。
俺はそんな田中にもう何も言わなかった。
正直に言える話はここまでだから。
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