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ミウが彼氏と別れた。
小母さんの言葉は俺の中をぐるぐると駆け巡った。
駆け巡りながら嬉しくてつい口元が綻んでいた。
ミウは彼氏と別れたのにそれが嬉しいだなんて…不謹慎だな。
でもいい。だって俺はそれを待っていたんだから。
小母さんが言った「それでだけど…いいかしら?」ってミウに会って欲しいって事だよな?
そんなの良いに決まっている。
だから俺は間を空けずに直ぐに返事をした。
「もちろんです」
「でも本当にいいの?何も結婚しなくてもいいのよ。ただ会ってくれればいいんだから」
小母さんは申し訳なさそうに言った。
きっと俺が結婚すると言った事を気にしているのだろう。
でも俺の中ではただ会うのではなく本当に結婚したいと思っていた。
きっかけは理沙から逃げる事と会社への体裁を取り繕う事だった。
だから結婚する事で全てが収まってくれることを願った。
でも今は違う。
本当に結婚してもいいと思ってる。
20年近く会ってないのに結婚したいだなんて変だよな。
でも幼き頃からのミウへの想いは今も変わらない。
結婚を意識してから益々思いが増してくる。
「小母さん、俺はミウと結婚を前提に会おうと思ってます」
俺の言葉に小母さんは少しの間、黙っていた。
そして電話の向こうから「ふっ」と笑い声が聞こえたかと思うと小母さんは穏やかに言った。
「孝くんがそう思ってくれているのなら何も言わないわ。こちらこそありがとうね」
俺は小母さんの声を聴きながら、きっと声と同様に穏やかな顔をしているのだろうと思った。
きっと俺の事を結婚相手として認めてくれたのだろう。
そんな小母さんの思いが嬉しくて気が付くと俺も穏やかな顔をしていた。
そして微笑みながら言った。
「お礼なんていいですよ」
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