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「孝くん、美羽と結婚しない?」
「は?結婚?」
「そうよ。孝くんだったらいいと思うんだ」
小母さんはとびきりの笑顔で言った。
俺はそんな小母さんの言葉に絶句して何も言い返せなかった。
小父さんの命日の前日、俺はいつものようにミウの実家に行った。
もう何年だろう?
こうして毎年ミウの実家に行くようになったのは。
墓参りをする訳でもなく、ただ仏壇に線香を上げる程度だが小母さんは俺を快く迎えてくれていた。
そして命日の前日に来る俺に小母さんは毎年のように「明日だったら美羽も帰ってくるのに」と残念そうに言ってた。
確かに命日に行けばミウに会えると思うけど。
でも俺はわざと前日に行っていた。
それは俺がまだ学生だった頃、親の命日にどうしても外せない予定があったから前日に墓参りをする事にした。
親には悪いなと申し訳ない気持ちで墓に行ったら、墓の前で手を合わせている小母さんの姿を見つけた。
確かに俺が行く時といつも必ず花が供えられていて、誰か来たんだと思っていた。
たぶん親戚の誰かだろうと思っていたけど、特に気にしていなかった。
俺に何の連絡もしてこないから。
だから会ったらお礼を言えばいいと思う程度だった。
でもそれが小母さんだと知って驚いた。
後で聞いた話によると小母さんは毎年必ず命日の前日に墓参りをしてくれていたらしい。
「命日だと親戚とか集まって大変でしょ?」って笑って言ってたっけ。
俺はそんな小母さんの気持ちが嬉しくて。
可愛がってくれた小父さんにも挨拶しなきゃいけないと思って。
それにあの家は俺にとっての思い出が沢山つまっている家だから。
だから行く事に抵抗はなかった。
むしろ行きたい気持ちの方が大きかった。
何より…ミウがいるから。
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