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するとミウはしばらく黙って俺を見ていた。
その瞳はさっきまでとは違い真剣で。
何かを考えているようにも見える。
俺はミウが何を考えているのか見当もつかなかったが、何も言わずに待っていた。
そしてしばらくの沈黙の後、ミウは俺の名前を呼んだ。
「ねえコウ」
「ん?」
俺はそう言うとミウを見た。
でもミウは何故か俺を見ようとはせずに視線を下に向けている。
そして言いづらそうに小さい声で言った。
「この前言ってた事だけど」
その瞬間、俺の胸がドキッとした。
ミウが何を言いたいのかわかったからだ。
「この前言っていた事」そんなのは決まっている。
「結婚の事?」
俺はできるだけ動揺しないように表情を変えずに言った。
ミウは認めるように「うん」と頷く。
…そうだよな。理由はこれか。
ただ飲むだけに俺の家なんかに来ないよな。
で、来たのはいいけど言いづらかったか?
俺が可哀想に思えたか?
別に気にしなくてもいいのに。
あっさりと断ればいいのに。
俺はこの時点で断られるとばかり思っていた。
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