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婚姻届は俺が一人で役所に行って提出する。
そんな予想とは逆にミウも一緒に行くと言った。
俺は凄く驚いたが、一緒に提出するのも悪い気がしない。
婚姻届の提出を俺は嬉しく思っていたが、ミウは不満げな顔をしていた。
どうやら職員の態度があっさりしすぎてつまらなかったらしい。
「ずいぶんとあっさりしているんだね」
「役所なんてこういうもんだろ」
不満げな顔をしているミウに俺は言い聞かせるように言う。
そして車のドアを開けるとミウは当たり前のように助手席に乗った。
俺達は引っ越しをした日に入籍もすませた。
結婚式も何もない、婚姻届け提出というただの手続きだけの結婚。
でもそれは二人で決めた事だ。
小母さんは結婚式を挙げると思っていたらしいが、ミウはそんな気がなかったらしい。
まぁそうだよな。俺達は恋人でもない。ただの幼馴染だ。
ただの幼馴染が恋愛もせずにそのまま結婚しただけだ。
ミウとしては結婚式を挙げる必要はないと思ったのだろう。
俺は…正直言って結婚式を挙げてもいいと思ったけど、ミウの思う通りにしてあげたかった。
「そりゃあそうだけど、なんかつまんない」
車を走らせるとミウは唇を尖らせながら言った。
どうやら手続きの際に何かイベントがあると思っていたのか、あまりにもあっさりと終わってしまった事に不満みたいだ。
まるで子供のように拗ねている。
俺はそんなミウが子供っぽく思えて、つい意地悪を言いたくなる。
「盛大に『おめでとうございます』って言って欲しかった?」
「そ、そんなことないよ」
ミウはそう言うとプイッと顔を逸らした。どうやら図星のようだ。
でもそれを俺に言われたのが嫌だったのだろう。
…わかりやすい。コイツ、素直じゃないよな。
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