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「まっ確かにあれじゃあ実感ねえよな」
「そうだよ。ないない」
ミウは俺の言葉にうんうんと頷いた。
確かに幾ら役所での手続きだとしてもウキウキしながら訪れる人にあっさりと無表情で対応されると拍子抜けする。
俺もこんなもんかぁと思ったから、ミウの気持ちがわからないでもない。
だから結婚を実感できる事を伝えようと思った。
「じゃあこれは?」
「ん?」
「ミウは今から小林さんだから」
俺は運転している事もあり、ミウを見る事なくただ前を見ながら言った。
ミウは俺が言いたい事がわからないみたいだ。
「えっ?」と言うとポカンと口を開けている。
…ったく。鈍い奴だな。
「だから、名字は小林だから」
するとミウはしばらく考えていたかと思うと「あっ」と言った。
ようやく意味がわかったらしい。
「そっか。受理されたから名字変わるんだ」
「そういうこと」
「ってことは、もう私達夫婦なんだ」
「そう言えば少しは実感わくだろ?」
そう。婚姻届けが受理された時点で俺達の結婚は成立した。
もうただの幼馴染じゃない。
夫と妻の関係だ。
ミウは実感してきたのか恥ずかしそうに俯いた。
そして「うん」と呟くように頷いた。
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