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俺は池上さんの話を聞き流しながらミウを探した。
見つけたら速攻移動するつもりだ。
すると大きなボールに入った野菜を持ってこっちに向かって歩いてくる華ちゃんと彼氏の後ろにミウの姿を見つけた。
…あんなところにいたんだ。
俺はミウを見つけてホッとしたが、その隣にいる人を見た途端、一瞬にして顔が強張った。
誰だアイツ?
ミウの隣には男がいて話をしているんだけど、なんか雰囲気が変だ。
ただの立ち話には見えない。
まるで恋人同士がじゃれあっているように。
時には笑い、時には真っ赤に恥ずかしそうな顔をして、それだけミウは嬉しそうだった。
…もしかしてアイツが早坂か?
確か前にミウから憧れている奴がいるって話を聞いた記憶がある。
早坂って奴で仙台から出張できているらしい。
年齢はミウより2つか3つ年上。
仕事もできて人付き合いも上手。しかも爽やかなイケメン。
俺はその話を聞いた時、すごく気分が悪かった。
会社の人の話だってわかっているが、ミウから男の話が出るなんてなかったから。
確かにいい男だ。ミウが憧れるのもわかる気がする。
でも目の前で話している二人は本当に仲が良さそうで、胸が張り裂けそうになる。
俺はこれ以上見たくないと思ったが、二人から視線を外す事ができなかった。
すると池上さんの声が聞こえてきた。
「…楽しみですね」
「えっ?」
二人を凝視していた俺は突然現実に戻された。
話を聞いてなかったから会話の内容がわからない。
どうやら適当に返事をしていたみたいだ。
池上さんはそんな俺を見ながらクスッと笑うと嬉しそうに言った。
「約束ですよ。楽しみだわ」
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