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飲み物が置いてあるテーブルに向かって行く途中、ミウの声が聞こえてきた。
どうやら誰かと話しているらしい。
でもまだ離れているから話の内容まではわからないが、相手は一人で…男だ。
…やっぱり男か。早坂か?
俺はゾワゾワする心を落ち着かせるように近くまで行くと息を潜むようにして物陰に隠れた。
そしてそっと見ると、そこにはミウと…元カレの姿があった。
…元カレ?早坂じゃないのか。
俺は話の相手が早坂でない事がわかるとホッとした。
それはバーベキューコンロの準備の時に元カレと話したからだ。
もう元カレの心にはミウはいない事を知っているから。
…先も戻るか。盗み聞きするのはよくないもんな。
俺は二人に気づかれない様にそっと戻る事にした。
すると元カレの言葉が聞こえてきた。
「でもいい旦那さんだな」
元カレの言葉に俺の脚がぴたっと止まるとまた物陰に隠れた。
…いい旦那さんって俺の事?
戻ろうとしたが、二人が俺の事を話しているとわかって戻るわけにはいかない。
何を話しているのか気になるからだ。
「は?」
「あんなに想われるなんて幸せだよ。お前は」
元カレはそう言うと微笑んだが、ミウはそんな元カレとは逆に困惑した顔をしている。
…まぁそうだよな。アイツの事だ、俺の気持ちなんかわかっちゃいない。
それにミウは知らないが、元カレに「アイツ俺のだから」って言ったもんな。
「じゃあ俺行くわ」
元カレがいなくなってもミウは困惑した顔をしたまま呆然としていた。
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