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ミウは先に戻っていく元カレの後姿をぼんやりと見ていた。
それは恋焦がれている人を見つめているようなものではない。
新たに前に進もうとしている元恋人を見送るかのように。
応援しているように見える。
…きっと自分の中でお別れをしているんだろうな。
この二人の未来は別々になってしまったが、でもお互いが後ろを振り向かずに前を向いている。
きっと会社でも普通に話せるのだろう。
ミウ…いい別れ方ができたな。
「おせーよ」
俺はそっと物陰から出るとぼんやりしているミウに声をかけた。
ミウは突然声をかけられた事に驚いたのかビクッと体を震わせた。
そしてゆっくりと振り返り俺を見て、また驚く。
…コイツ全然気づいていなかったんだ。
こんなに近くにいたのにな。
「あ…ゴメン」
「ったく。ほら行くぞ」
俺はそう言うとミウから二人分の飲み物を取り上げて先に歩き出した。
でもミウがついて来る気配がない。
俺が振り返るとミウはどうしたらいいのか困った顔をしていた。
きっと元カレと話していて遅くなったのを怒っていると思ったのだろう。
そんな事ないのにな。
だから俺は足を止めるとミウを真っ直ぐ見ながら言った。
「早く来いよ」
ミウは俺が怒ってない事がわかると微笑んだ。
そしてゆっくりと歩き出した。
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