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「へぇ…でも俺、結婚しているんだけど」
俺はとりあえずやんわりと断った。
教えてる気はさらさらないが、この女はミウの同僚だ。
だから冷たく言うのは悪いと思ったからだ。
でもこの女に俺の思いは通じない。
「ああ。そんなのわかってます。でも関係ないです」
「はぁ?」
「わからなければいいんですよ」
池上さんはそう言うとニヤリと挑発的な顔をした。
その顔はバレなきゃいいんですよと言わんばかりだ。
俺はそんな池上さんを心の中で冷めた目で見ていた。
…わからなければ…いいか。
何かこの女、痛いな。
いつもこうなんだろうな。
きっと女がいる男にしか興味がない。
自分に自信がないから女がいる男を寝取っては飽きて、次から次へと男を変えているのだろう。
でも元カレもこんな女を好きになるって、俺だったら御免だな。
「ふーん。いつもそうやって人の男取ってるの?」
「えっ?」
俺の言葉に池上さんの顔がピクッとした。
そして眉間にしわが寄っていく。
「あんたの言い方だよ。関係ないって普通言わないもんな」
「悪いですか?」
「いや、悪くない。あんた凄いよ」
「ふふっ。褒め言葉として受け取りますね」
池上さんは俺が否定しなかった事にホッとしたのか、微笑みながら俺に近づくと手を回しながら抱きつこうとした。
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