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「あのさぁ。悪いけど俺、あんたに教えるつもりないから」
池上さんが抱きつこうとすると俺は冷ややかに言った。
それがあまりにも冷たく聞こえたのか、俺の言葉に池上さんの動きがピタッと止まる。
その隙に俺はスッと離れた。
「どうして?」
池上さんは目を丸くして驚いた顔で俺を見ている。
「だからあんたとそのつもりはないって言ってるの」
そんなの当たり前だが、俺はこの女と関係を持とうとは思ってない。
俺にはとても大切にしている人がいるんだから。
ミウを悲しませたくない。
それでも池上さんに俺の気持ちは通じてないみたいだ。
「もしかして奥さんの事を気にしてます?私、大丈夫ですよ。構いません。だから…」
言い止まるどころか、さらに追い込みをかけようとする。
…この女。わかってないな。
だから俺は池上さんが言い終わる前に遮る様に言った。
「構わないって、あんたバカだろ?」
「バ、バカ?」
池上さんは眉間にしわを寄せながら言った。
そしてみるみる怖い形相になっていく。
もうその顔から俺を誘っているようには見えない。
まるで敵を見るように俺を睨んでいた。
でもそんなの俺には関係ない。
「あんたさぁ、男がみんなそう言って喜ぶと思ってんの?」
「な…何よ」
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