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「まぁ体だけの女だって喜ぶ奴はいるかな」
そう。こういう女を喜ぶ男だっている。
特定の女は作らないで体だけの関係…セフレを求める男も。
男だってバカじゃない。
皆が皆、この女の魔の手に引っかかるわけない。
逆に利用される場合もあるんだ。
俺の言葉に池上さんは悲しそうな顔をすると「体だけ…」と小さく呟いた。
その顔は今にも泣きそうで目線を下に向けている。
きっとここまで言われるとは思っていなかったのだろう。悔しいだろう。
でも俺は言うのを止めなかった。
「だってそうだろ?奥さんがいても構いませんって『浮気しましょう』って言ってるようなもんだろ」
「もういいわよ!あなたみたいな人こっちから願い下げだわ」
「ああ大丈夫。俺、あんたに興味ないし。タイプでもないから」
「…」
「でもまぁこんなあんたでも想っている奴がいるんだよ。一度は付き合ってたんだろ?まずはそいつとちゃんと向き合ってみたら?」
俺はそう言いながら奥を指差した。
そう。俺は気がついていた。
俺達の会話を遠くから心配そうに見ていた人がいた事を。
池上さんはその人の視線に気がつくと黙ってこの場から離れて行った。
その人とは…元カレだ。
元カレは離れて行く池上さんを追いかけて行った。
そして追いつき、池上さんの手を取ると同時にぎゅっと抱きしめた。
池上さんはもう逃げようとはしない。抱きしめ合ったまま耳元で囁くように話している。
きっと元カレの事が嫌いではないのだろう。
もしかしたら本当は好きなのかもしれないな。
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