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「おい。いつまで隠れているんだ?」
池上さんがいなくなると俺は物陰に背を向けたまま言った。
元カレ以外に俺達の話をこっそり聞いていた奴がもう一人いた事に気がついていたから。
まぁコイツは偶然その場に居合わせて逃げ場が無くなったのだろう。
だからしょうがなく話を聞いていたって感じか?
コイツ…ミウは恥ずかしそうな顔をしながら物陰から出てきた。
「あ…わかってた?」
その顔は「わからないと思っていたのに」と言わんばかりだ。
物陰から人の影が見えていたし、体を隠したつもりでもバックが見えてるっつーの。
そのバックでお前だってわかってたんだよ。
…ったく。いつも見ているんだから気づかないわけないだろ。
「もうバレバレ」
「ゴメン」
「じゃあ帰るか。駐車場まで少し歩くぞ」
「うん」
ミウが頷くと俺はゆっくりと歩き出した。
駐車場までは砂浜を歩いて行かなければならなかった。
砂はサラサラでその日ミウが履いていたサンダルだと歩きにくそうだ。いつもより歩くのが遅い。
見かねた俺は立ち止まるとミウを見た。
「お前本当にバカだな。ほら掴まれ」
俺はそう言うとミウの手をぎゅっと握った。
ミウは一瞬ハッとした顔をしたが俺は黙ってゆっくりと歩き出した。
歩きづらいミウの歩幅に合わすように。
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