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それから俺達は手を繋いだまま一言も喋らずに駐車場へと向かった。
繋いだミウの手は華奢で。でも温かくて。
その温かさが俺の心を和ませてくれる。
手を繋ぐだけでこんなに気持ちいいなんて、こんな純粋な気持ちが俺の中にあるとは思ってなかったよ。
ああ。いいな、この感じ。ずっと繋いでいたい。
俺はミウの手の感触に浸っていると、少し躊躇うようにミウの声が聞こえてきた。
「…ねえコウの好きなタイプってどんな感じ?」
「はぁ?」
俺はミウの言葉に戸惑った。
今、好きなタイプって言ってたよな?
何でそんな事を聞くんだ?
「だって池上さんみたいな美人じゃなかったらどんな人なのかなって思って」
ミウは俺を見ずにまっすぐ前を見たまま言う。
…そっか。さっきの話を聞いていたんだよな。
でもあの女、そんなに美人か?仮に美人だとしてもああいうのは好きにはならない。
それに俺が好きなのは…。
「…バカみたいなやつ」
俺は「ミウお前だ」と言いたい思いを閉じ込めて、遠回りした言い方をした。
さっき砂浜を歩いている時にミウに言った言葉だ。
案外これでわかっちゃうんじゃないか?
でもミウはわかってないみたいだ。
呆気にとられた顔をすると意味がわからないと言わんばかりに言った。
「はぁ?バカ?」
…相変わらず大事な所で鈍い奴だな。
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