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「ん…」
コウのキスは甘くて優しい。
いつも私の事をバカにして、意地悪ばっかり言ってるのに…。
こんなキスをするなんて…狡い。
だから私はコウの唇から目が離せない。
薄くて形の整ったその唇は私だけにキスをしてくれる。
だから私はそんなコウの唇が大好きだ。
いや唇だけじゃない。
コウが大好きだ。
「ファーストキス?」
コウは興味なさそうに言った。
私が聞いているのに視線はテレビに向けたままだ。
久しぶりの休日。
どこにも行く予定がなくて家でのんびりしていた。
気持ちが通じた今、アツアツの新婚のようになるかと思ってたんだけど…。
やっぱりコウはコウで。
無愛想なのも意地悪なのも変わらない。
だからこの質問も当然の反応をしている。
…まぁコウがそういう奴だってわかっているけどさ。
もう少しいい反応をして欲しい。
私は「はぁ」と溜息をつくとコウに雑誌を見せながら言った。
「ほら、ここにあるでしょ。あなたのファーストキスはいつですか?って」
私がコウに見せるその雑誌は30代向けの女性誌で気が向いた時にコンビニで買っている。
ファッションがメインなんだが、読書のアンケートが面白くてついついそっちを重点的に見てしまう。
今回の特集はファーストキスだ。
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