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「ふーん」
私が思い出に浸っていると冷めたコウの声が聞こえてきた。
その言い方は「ミウにも恋愛経験があったんだぁ」とバカにしているように聞こえる。
そ、そりゃあコウのように容姿端麗でモテモテの人生ではない。
付き合った人も少ないかもしれないけど。
私だって平凡だけどそれなりの恋愛をしてきている。
それなのに再会して1年も経たないコウにこんな風に言われるなんて。
高校生の私を知らないのにそんなこと言うな!
そう思うと苛立ちが大きくなっていく。
「わ、私にだってそれなりに恋愛経験あるんだから」
私はキッとコウを睨みながら言った。
でもコウは怯む様子はない。
冷めた目をしたまま私を見ている。
「違うな」
「へ?」
私はコウの言葉に拍子抜けした顔をした。
あまりにも見当違いの言葉に苛立ちが一瞬消える。
恋愛経験の話をしているのに「違うな」って何?
コウが言っている意味がわからない。
私がきょとんとしているとコウは言い聞かせるように言った。
「それファーストキスじゃない」
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