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「あっ!それ覚えている。確かバランスを崩して顔から落ちたんだよね」
私は記憶が蘇って嬉しくなった。
そうそう。あったあった。
確かコウに縺れるように倒れていったっけ。
だから大したケガにはならなかったんだよね。
お母さんにも直接床に落ちないで良かったねって言われたんだ。
「その時だよ。キスしたのは」
「そ、そうだっけ?」
「横で本を読んでいた俺に縺れるように落ちてきてキスしたんだよ」
「あ…」
確かにあの時、ぶつかる瞬間コウと目が合った。
凄く近い所にコウの顔があった。
それは覚えているけど…キスしたっけ?
どうしてもキスだけは思い出せない。
「まぁおまえは直ぐに顔が痛いって小母さんの所に行ったもんな。だからそんな感覚無いのかもな」
「う…」
「俺のファーストキス奪っておいてさ」
コウはそう言うとニヤリとした。
その顔は別に怒っていないのはわかるけど、私はコウに対して申し訳ない気分だった。
だから気がつくと謝っていた。
「…ごめん」
私は頭をペコリと下げるとそのままソファーに寄り掛かった。
コウはずっと覚えていたのに私は全くキスに関しての記憶がない。
ファーストキスなのに覚えてないって…。
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