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「ずいぶん時間かかったな」
部屋に戻ってから1時間。
やっとミウがリビングに戻ってきた。
さすが1時間も待たされるといくら家とは言え待ちくたびれる。
だから俺は嫌味っぽく言った。
でもミウはそんなの関係ないと言わんばかりに、にこやかに微笑んでいる。
「だってしょうがないでしょ。着付けに髪も一人でやったんだから。ねっ」
そしてそう言うと俺の前で回った。
俺はそんなミウを見るなりゴクっと喉を鳴らしてしまった。
それは浴衣を着たミウがあまりにも綺麗だったから。
ミウって可愛い印象が強かったんだけどな。
…綺麗だ。
ミウはこの1時間の間で浴衣に着替えてきた。
落ち着いた印象の濃紺に薄い朝顔が可憐に咲き誇る浴衣に淡いパープルの帯。
髪はアップにして、清潔感が良く出ている。
いつもと違う大人な感じのミウが目の前にいる。
俺に向かって微笑んでいる。
その微笑みはしっとりしていて、俺はミウから視線を外せなくなる。
ずっと見ていたい。
このまま花火なんか行かないで二人きりでいたい。
でもそうもいかないよな。
ミウは花火大会に行きたいんだもんな。
それに俺がそんな風に思っているとミウに気づかれるのも嫌だ。
気づかれた事を考えると恥ずかしくなってくる。
「ほら行くぞ。時間ないだろ?」
恥ずかしくなった俺はそう言うと玄関に向かって行った。
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