君の瞳に映るもの

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花火大会の会場である河川敷は多くの人で賑わっていた。 まだ空は少し明るく、打ち上げ時間までまだ時間があるというのにかなりの人が会場内にいた。 実際に始まるとどれだけの人が来るのだろうと思う位に、人の多さに俺は圧倒されていた。 「凄い人だな」 「こんなにいると逸れちゃいそう」 ミウはそう言うと「あっ」とすれ違う人にぶつかってよろけそうになる。 そんなミウを見ながら「言った途端からこれかよ」と思うと呆れてしまう。 だからつい意地悪な事を言いたくなる。 「だよな。お前トロイから」 「トロイって何よ!子供扱いし…て…えっ?」 ミウは俺をキッと睨み言い返そうとする。 俺は遮るようにミウの右手をギュッと握った。 その途端にさっきまで俺を睨んでいたミウの顔がハッと固まった。 そして目を丸くして俺を見る。 きっと突然、手を握って驚いたんだろう。 そんな反応をするミウが可愛く感じて微笑んでしまう。 「これで逸れないだろ?手、離すなよ」 「う、うん」 ミウは頷くと俺の手をぎゅっと強く握り返してきた。 そして夜空を見上げていた。 俺の手を握るミウの手はどこか冷たくて、この暑さから解放してくれる。 夜空を見上げる顔はどこか恥ずかしそうで。 こんな表情を俺に見せてくれると思うと嬉しく感じる。 …悪いな。俺はやっぱりミウを誰にも渡したくない。
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