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しばらく待っていると、夜空一面に大きな花火が広がった。
まだ夜空とは言えない明るさが残っている中でも真っ赤の花火は存在感がある。
花火大会に誘われた時、正直言って付き添いの気持ちだった。
せっかくミウが誘ってくれたから。
だからそれほど興味がなかったはずなんだけどな。
でも何だろう?この少年のように興奮した気持ちは。
夜空に広がる花火があまりにも綺麗で、俺は思わず声を出してしまった。
「おっ始まった」
俺はただ夢中に花火を見ていた。
花火は一つ二つとどんどん加速して上げられていく。
赤や青、緑。
紫や色んな色の花火が夜空を舞っている。
そしてドスンと体に響くような大きな音。
周りの人達も歓喜を上げながら空を見上げ花火を夢中に見ていた。
だから隣から「コウ見て!凄いね。綺麗だね」とミウの声が聞こえてきても、周りの歓喜の声、花火の音にかき消されてしまっていた。
しばらく花火を見ているとふとミウの事が気になった。
ずっと花火ばかり見ていてミウを全く見ていなかったからだ。
俺はゆっくりと視線をミウに移した。
でもミウも花火に夢中になっているのか、俺が見ている事に全く気がつかない。
「…綺麗」
ミウは夜空を見上げたまま呟いた。
浴衣を着ているその姿はしっとりと大人の色気があって。
夢中になっているその顔は綺麗で。
しっかりと握られている手からミウの体温を感じる事ができて。
花火は休む事無くどんどん打ち上げられていく中、俺はミウから視線を外す事が出来なかった。
愛おしくてたまらなかった。
だからついミウの名前を呼んでしまった。
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