1085人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、田中達は夕方まで家にいた。
さっきまで賑やかだったリビングも二人きりだと広く感じる。
確かに田中はうるさくて早く帰れと思っていたが、人柄的には悪い奴でもない。
とにかく人を楽しませるのが好きだから、俺はうるさく感じてしまうのだ。
「楽しかったね」
ミウはコーヒーカップをトレイにのせながら言うとキッチンへと向かう。
「そうだな」
俺はトレイに乗りきれなかったコーヒーカップをキッチンまで運んだ。
そして洗い物をしているミウに差し出すと「ありがとう」と微笑みながら受け取った。
普通のやり取りだが、俺には心地いい。
ミウの微笑みが心を和ませてくれる。
たまの客人もいいが、やっぱりミウと二人がいい。
ミウが洗い物をしている間、俺はソファーに座ってテレビを見ていた。
いや、見ていたというよりか眺めていた方が正しい。
すると洗い物が終わったのかミウが缶ビールを2本持って来た。
そして俺の前に立つと1本差しだしながら言った。
「おつかれ」
「ん」
俺はビールを受け取るとミウが座りやすいように隣を空けた。
ミウは隣に座ると缶ビールの蓋をカコっと開け一気に喉に流し込む。
「あぁ美味しい」
そう言うとミウはソファの背もたれに頭をのせ天井を見上げた。
ミウのその顔は緊張感から解放れたのかぼんやりしていて疲れたんだなぁと思った。
俺はそんなミウを黙って見ていた。
…まぁそうだよな。気疲れするよな。
最初のコメントを投稿しよう!