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「私、名前聞いてビックリしちゃった」
「そっか」
そうだよな。ビックリするはずだ。
プレゼンに参加している会社に理沙の会社がいた事をミウに話していなかったもんな。
話していなかったのはミウに余計な心配をかけたくなかったから。
理沙の名前を出して気まずくなるのが嫌だったからだ。
でもミウはそんな事を気にしているようではなさそうだ。
嫌がるどころか尊敬するような眼差しで言った。
「理紗さんってやっぱり凄い人だなって思った。けど…」
ミウはそう言うと俺をじっと見つめた。
…けど?何だ?
「でもすごく悔しかった」
「ミウ?」
「本当に悔しいのはコウなのにね」
ミウは悔しそうな顔をした。
それは今にも泣きそうで…まるで俺の心を代弁しているように見える。
「…ミウ」
「だから悔しくて悔しくて気がついたら倒れそうになったの。高科さんは私を支えてくれただけ」
ミウはそう言うと真っ直ぐに俺を見た。
その瞳に嘘はなく、さっきまで抱いていた高科への不信感も拭い去れる。
「そっか」
俺はそう言うとミウの頭を優しく撫でた。
何度も何度も。
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