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それから数日後の仕事中、隣に立っている人から声をかけられた。
「先日はどーも。ご馳走様でした」
俺はその声につられるように振り向くと田中が缶コーヒーを2つ持っている。
そして俺の目の前に缶コーヒーを差し出した。
「はいっ」
それは自販機で買ってきたばかりなのか、まだ受け取っていなくても冷たそうに感じる。
俺は田中の意外な行動に拍子抜けした。
…珍しいな。田中がコーヒーくれるなんて。何かあるのか?
でもこうして差し出してくれているのを断るわけにもいかない。
俺はそのまま受け取るとお礼を言った。
「あ…ども」
「いやーでもここでは見られない小林くんの姿が見れて良かったよ。うん。良かった」
田中はしみじみと俺の顔を見た。
その表情は嬉しそうな感じで穏やかに微笑んでいる。
でも俺は何を言いたいのか意味がわからなかった。
…ここでは見られない俺の姿?
「は?」
俺は思わず眉間に皺を寄せてしまった。
そんな俺の反応が面白いのか田中はニヤニヤしながら言った。
「本当に奥さんが好きなんだな。俺達がいるのにずっと奥さんばかり見てたよな」
俺は田中の言葉にドキッと動揺した。
…奥さん?ミウ?
あ…。
その瞬間コイツが何を言いたいのかわかった。
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