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田中はきっとこの前、家に遊びに来た時の事を言っているのだろう。
でもミウばかり見ていたって…。
確かに間違っていない。
それに気づくって、コイツ意外に鋭いんだな。
でもコイツの事だ、ここで認めると後々バカにされるだろう。
それは勘弁してもらいたい。
だから俺は動揺する胸を抑えながら咄嗟に否定した。
「み、見てねーよ」
俺はできるだけいつものように言った。
だけど、田中はそんな俺を見ながら「ふふっ」と笑っている。
「まっ。いいんじゃないの、新婚なんだしさ。でも明日から沖縄出張だけど大丈夫なの?」
そう。田中の言う通り明日から沖縄出張に行く。
これは前々から決まっていた事だし、ミウにも当然話してある。
でも、コイツの言う大丈夫って…絶対に寂しいんじゃないの?って事だ。
寂しい…そりゃあ寂しいよ。ミウに会えない日々を考えると胸がキューと締め付けられる。
そんなのわかっている。
でもそれ以上に田中の言い方がムカつく。
コイツには本心を言いたくない。
だから俺は吐き捨てるように言った。
「お前に心配される事はない」
でも田中には効かないみたいだ。
気持ち悪いくらいにとびきりの笑顔で俺を見ている。
「ふーん。だったらいいけどね。俺は寂しいよぉ可愛い奥さんにベビちゃん置いていくの」
田中はそう言うとピースサインをしながら自席に戻っていった。
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