小さな嘘と大きな代償

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「バカンスはおあずけかぁ」 田中は大きなキャリーバックを引きずりながらガッカリした顔をした。 俺はそんな田中を見ながら「はぁ」と溜息をついた。 「しょうがないだろ。遊びじゃないんだから」 確かに田中の気持ちもわかる。 空港から休む事無くクライアント先に行くなんて嫌だよな。 沖縄に着くと休む間もなく打ち合わせが待っていた。 だから荷物を持ったままクライアント先に向かっている。 てっきり明日からかと思っていたのに、初日からこれかよと思うと先行きが不安になる。 けど、早く終わるのであればそれに越した事はない。 まぁ予定は1週間だから何とかなるか…。 会社が用意してくれたウイークリーマンションに着いたのは夜になってからだった。 そこは繁華街から近くて生活に不便はしなさそうだ。 俺は自分の部屋に入ると荷物を置き、バルコニーに向かった。 そして窓を開けると夜空を見上げた。 沖縄の夜は明るい。 それは空が明るいのではなくて、遅い時間でも町全体が賑わっている。 多くの人が出歩いている。 …この雰囲気、東京とは全く違うな。 どう説明したらいいのかわからないが、沖縄は東京と違い開放感がある。 だからか遅い時間でもそう思えない。 今度はミウと来たいな。 …ミウかぁ。 今頃何をしているのだろう? 俺は持っていた携帯電話からミウのアドレスを探し電話をかけた。
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