小さな嘘と大きな代償

33/37
前へ
/37ページ
次へ
俺は玄関にキャリーバックを置くと真っ直ぐリビングに行った。 リビングは俺とミウが一緒に過ごす場所だからだ。 仕事から帰ってリビングにいるミウの笑顔を見る。 これが1日の疲れを取ってくれる特効薬だった。 やはりミウの姿はここにはない。 リビングは無音で人の気配もなかった。 …やはり仕事…か。 俺はミウがいないとわかると倒れこむようにソファーに寝転がった。 急いで帰ってきたから気づいていなかったが、足がパンパンで体がだるい。 ミウが帰ってくるまでここで待っていよう。 確かミウの会社はこの時期に決算を迎えるから忙しいと言ってた。 だから逆にこの時間に家にいる方がおかしい。 それだったら帰ってくるのを待っていればいい。 俺は軽く目を閉じようと思ったが、何気なくキッチンに視線を移すとテーブルに置いてある物に目が留まった。 「あ…」 封筒と…指輪だ。 その瞬間、ゾクリと悪寒が走った。嫌な予感がする。 俺は慌てて立ち上がり、封筒と指輪を手に取るとミウの部屋に向かっていた。 ミウの部屋はドアが開いていて、中に入るなり俺は呆然と立ち尽くしていた。 …何もない。 そこは確かにミウの部屋なんだけど家具も何もなく、人が生活するような部屋には見えない。 「ミウ」 気がつくと俺はミウの名前を呼んでいた。 当然だが、空っぽの部屋から返事が聞こえるはずがない。 それでも俺は部屋から動こうとは思わなかった。 …ミウ。 あ…そうだ。封筒。 俺は手に持っていた封筒を開けるとそこには便箋が入っていた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1005人が本棚に入れています
本棚に追加