1005人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は玄関にキャリーバックを置くと真っ直ぐリビングに行った。
リビングは俺とミウが一緒に過ごす場所だからだ。
仕事から帰ってリビングにいるミウの笑顔を見る。
これが1日の疲れを取ってくれる特効薬だった。
やはりミウの姿はここにはない。
リビングは無音で人の気配もなかった。
…やはり仕事…か。
俺はミウがいないとわかると倒れこむようにソファーに寝転がった。
急いで帰ってきたから気づいていなかったが、足がパンパンで体がだるい。
ミウが帰ってくるまでここで待っていよう。
確かミウの会社はこの時期に決算を迎えるから忙しいと言ってた。
だから逆にこの時間に家にいる方がおかしい。
それだったら帰ってくるのを待っていればいい。
俺は軽く目を閉じようと思ったが、何気なくキッチンに視線を移すとテーブルに置いてある物に目が留まった。
「あ…」
封筒と…指輪だ。
その瞬間、ゾクリと悪寒が走った。嫌な予感がする。
俺は慌てて立ち上がり、封筒と指輪を手に取るとミウの部屋に向かっていた。
ミウの部屋はドアが開いていて、中に入るなり俺は呆然と立ち尽くしていた。
…何もない。
そこは確かにミウの部屋なんだけど家具も何もなく、人が生活するような部屋には見えない。
「ミウ」
気がつくと俺はミウの名前を呼んでいた。
当然だが、空っぽの部屋から返事が聞こえるはずがない。
それでも俺は部屋から動こうとは思わなかった。
…ミウ。
あ…そうだ。封筒。
俺は手に持っていた封筒を開けるとそこには便箋が入っていた。
最初のコメントを投稿しよう!