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コウの手を取ると同時に思い切り抱き寄せられた。
それがあまりにも力強くて私は思わず声を出してしまった。
「きゃっ…」
…コウの腕の中だ。
気がつくと私はコウの腕の中にいた。
するとコウはそのまま私をぎゅっと抱きしめた。
その力は強くてこのまま締め付けられてしまうのではないかと錯覚してしまう。
「…コウ?」
私が呼んでもコウは力を抜こうとしない。
まるで大切な宝物を手にしているように。
誰にも渡さないと言わんばかりに。
そしてコウは私の耳元に唇を寄せると震える声で言った。
「やっと…やっと帰ってきた」
「…コウ」
「もうどこにも行かないで。ずっと…ずっと俺のそばにいて」
コウの想いが私の心にじわじわと染みる。
私を想っているのは十分にわかっているのに、それ以上の想いが。
それは上手く言えないけど、私は愛されているんだと実感する。
私はそっとコウの腕を離した。
目の前には今にも泣きそうな顔をしたコウがいる。
たぶんこんな顔、他の人には見せないだろう。
弱い部分、コウはそれを私には見せてくれる。
そんなコウの全てが堪らなく愛おしい。
「…うん。行かないよ、ずっとコウのそばにいる」
私はコウの頬に両手を添えた。
そして自分からそっとキスをした。
もうどこにも行かない。
私の帰る場所。
それはコウ、あなただ。
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