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「あーあ…今年はハズレだぁ」
華ちゃんは部長の隣に立っている人を見ながらボソッと呟いた。
就業前に部長は皆を集めると新任者の紹介を始めた。
早坂さんを見送ってから1週間。
今年も地方から一人お手伝いとして転勤してきた。
新しい人が来ると分かってから数日、どんな人が来るのだろうと女子社員はざわついていた。
私も華ちゃんもその中の一人だ。
昨年は早坂さんだったし、連続でイケメンが来るんじゃないかと期待していたから。
華ちゃんはその期待が外れたとわかるとガッカリした顔をした。
その表情はあからさまで転勤してきた相手に失礼だ。
だから私は顔を部長の方に向けたまま小声で華ちゃんに言った。
「こらこら、そう言わないの。失礼でしょ」
「だってぇ。おじさんじゃないですかぁ」
「おじさんって言わない」
「昨年は早坂さんだったんですよぉ」
華ちゃんは私に叱られると口を尖らせた。
まぁ確かに華ちゃんの気持ちもわかる。
年齢は50代だろうか。
草臥れた年代物のスーツにネクタイ。
少し薄くなった前髪。
今年手伝いとして転勤してきた人はどう見てもおじさんだ。
華ちゃんがガッカリするのもわかる。
でもここで私までもが同じ反応をするわけにもいかない。
だから私は部長の話を聞いているふりをしながら華ちゃんを慰めた。
「まぁ気持ちはわかるけど…ね」
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