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「好きだと伝えられないのなら、せめて忘れて欲しくなかった。だから小父さんの命日の前の日に実家に行った。小母さんは俺の事を話しただろ?」
確かにお母さんは私が命日に実家に戻る度にコウが来てた事を話していた。
それも決まって前日に来ていたと。
…前日?何で?
考えてみれば前日に来る事なんかない。
当日に行けば私達もっと早く再会できたのに…。
「…あ、うん。でも…何で…前日?」
私はどうして前日に来ていたのか聞いてみた。
するとその疑問の答えをコウは恥ずかしそうに教えてくれた。
「俺さ、ミウに会う自信が無かったんだ」
「…そうなんだ」
「会う自信がないくせに、どうしても忘れて欲しくなくて。…矛盾しているよな。でも俺が行けば小母さんはきっとミウに話す。それだけでよかった」
コウはそう言うと優しく微笑んだ。
私に会う自信がなくて前日に実家を訪れていた。
そう話すコウは私の知っているコウじゃない。
コウはいつも余裕で意地悪ばかり言ってるのに、まるで子供みたいだ。
こんな私に会う自信が無かったなんて…。
コウが見せる弱さは私の心をキュンとさせる。
両手で思い切りぎゅっと抱きしめたいって衝動が起きる。
「コウ…」
「そんな時だよ。小母さんから結婚の話が出たのは」
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