帰る場所

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「その話を聞いた時、俺は戸惑ったよ。小母さん何言っているの?って」 「…」 「だってそうだろ?いくら好きでも20年近く会ってないのにいきなり結婚だなんてありえないと思うだろ?」 コウはそう言うと「ふふ」と笑った。 確かにコウの言う通りだ。 20年近く会っていないのにいきなり結婚しない?って言われて戸惑わない人がいるはずがない。 ああ…なんて不可解な事を言ったのだろうか?母親は。 自分の母親ながら突然コウにそう言った事を考えるとバツが悪くなる。 私は下を向くと小さく呟くように言った。 「…うん」 「だから俺は最初断ったんだ。何言ってんですか?って。そしたら小母さんなんて言ったと思う?」 そう言うとコウは私の顔を覗き込んだ。 まるで回答を待っているかのように。 でも私は答えるのが恥ずかしくて嫌だった。 きっと母親の事だ、無理やりにでも結婚するように説得したのかもしれない。 …あの人なら言いかねない。 だから私は逆にコウに聞いた。 「…何て言ったの?」 「ただミウに会ってくれればそれだけでいい。俺と会う事でミウが結婚に対して意識してくれればそれだけでいいから、だから結婚は考えないでいいから会ってくれない?って。小母さんはおまえの事を心配してたんだよな」 …ただ会うだけでいい。結婚は考えないでいいから。 私はコウの言葉が意外で思わず驚いた声を出してしまった。 「そうだったの?」 「おまえ何もわかってなかったんだな」 コウはそう言うと「あはは」と少年のように笑った。
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