帰る場所

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母親の取った行動は私には意外なものだった。 コウにただ私に会ってくれればいい。 それは私を心配して結婚に対して意識を持って欲しかったから。 いつまでもフラフラしてないで結婚して落ち着いて欲しかった。 だからコウに会って私の意識が変わればいいと思ってたんだ。 …。 でも…。 それじゃあどうして? お母さんは結婚しろって言わなかったのに…。 コウは結婚しようと思ったの? 「じゃあどうして?コウはどうして結婚しようと思ったの?お母さんはただ会うだけでいいって言ったんでしょ?」 私が言うとコウはバツの悪そうな顔をした。 そして歯切れ悪そうに頷いた。 「…うん」 「コウ?」 コウは私が名前を呼ぶと下を向くと黙ってしまった。 私はそんなコウの歯切れの悪さに胸がざわっとした。 それは幼い頃に私が好きだったと言ってたような切なさではなくて。 この話はできたらしたくないと伏せておきたかった。 私には知られたくなかったような感じで。 …コウ何があったの? 私は心配になりながら、このまま話を聞いていいのか戸惑っていた。 すると下を向いたままのコウが呟くように言った。 「俺さ……あの時、逃げ切れようのない状態だったんだ」
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