帰る場所

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私はゆっくり微笑むと頭を横に振りながら言った。 「ううん。軽蔑してないよ」 「…ミウ」 コウは呟くように言うと私を真っ直ぐに見た。 その顔は呆然としていて、瞳は夕日が映っているせいか少し潤んでいるようで。 まるで怒られるのを覚悟していた子供のように見える。 ああ…そうだ。 コウは年下だったんだ。 いつもは感じないけど、私の方がお姉ちゃんだった。 だから私はまるで小さい子供に話すように優しく話した。 「まぁ過去は酷かったかもしれないけど、それは私に会う前の事だし。コウは理沙さんの事も隠さずに全て話してくれた」 「…うん」 「私は寧ろ感謝している。だってコウは私を幸せにしてくれたんだもん」 「そっか」 コウは私の言葉に安心したのか嬉しそうに微笑んだ。 そのコウの笑顔は私の心もホッとする。 うん。この笑顔だよ。 「だから結婚した事を後悔して…あっ!」 後悔してないと言おうとした瞬間、ある事を思い出した私は思わず声を出してしまった。 突然の大声にコウは驚いた顔で私を見ている。 「離婚届って提出したの?」
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