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「ああ、これ?」
コウはそう言うとズボンのポケットから1枚の紙切れを私の前に出した。
それを目にした瞬間、私はホッとしたと同時に声が出ていた。
「…出してなかったんだ」
コウが目の前に差し出した1枚の紙切れ。
それは家を出る時に置いていった離婚届。
…コウ提出していなかったんだ。
すると呆れたようなコウの優しい声が聞こえてきた。
「出すわけないだろ」
コウはそう言うと私の目の前で離婚届をビリッと破いた。
「あ…」
「ほら、ミウも」
そう言うとコウは私に破けた離婚届を差し出した。
私は差し出された離婚届を受け取ると直ぐにコウの声が聞こえてきた。
「破って」
「あ…うん」
私は頷くとコウと同じように離婚届をビリッと破いた。
「よし後は二人で」
コウはそう言うと私の手にそっと自分の手を添えた。
そして一気に力を入れると離婚届を破いていく。
それはまるで二人で破いているように。
離婚なんか絶対にしないって。
ビリビリ、ビリビリと何度も。
これが何の用紙かわからない位に私達は破いた。
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