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もうこれ以上破けない位になるとコウは立ち上がり、ゴミ箱に向かって歩き出した。
そしてポイッと破いた離婚届を投げ入れると私の名前を呼んだ。
「なあ、ミウ」
「ん?」
私は呼ばれるがままコウの顔を見ると「あ…」と声を出してしまった。
コウがカッコいいのは十分にわかっているけど。
こうして夕日をバックにしたコウはそれ以上にカッコよく見えて。
見慣れているはずなのに見入ってしまう。
するとコウは優しく微笑みながら言った。
「結婚しよう」
私はコウの言葉に驚いた。
だって私達…。
「えっ?私達、結婚しているじゃん」
「そうじゃなくて、ちゃんと結婚式を挙げよう」
…結婚式を挙げよう。
そう言うコウの表情は優しくて温かくて。
コウの気持ちが心に染みて涙が溢れてくる。
私は「…コウ」と呟くと顔を手で覆った。
するとコウの心配そうな声が聞こえてきた。
「ダメか?」
ダメか?
違うよ。嬉しいんだよ。コウの気持ちが凄く嬉しいの。
こんなにも私を想ってくれるコウの気持ちが。
…ダメなはずないじゃない。
私は顔を上げて涙を拭き取ると、とびきりの笑顔で言った。
「私、ウェディングドレスが着たい」
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