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「俺も見たい。ミウのウエディングドレス姿」
コウは嬉しそうな顔をしながら言った。
その顔は全てを包み込むような優しい笑顔で、私の心が満たされていく。
…コウと結婚してよかった。
「…うん」
するとコウは「あっ」と何かを思い出したように言った。
「そう言えば前々から気になっていたんだけど、ミウはどうして俺と結婚しようと思ったの?」
「あ…えーっと」
私はどう答えていいのか迷い言葉を濁してしまった。
だって本当の事、言えないよ。家賃の更新と冷蔵庫だなんて。
でもだからって前からコウが好きだったなんて、どう考えても嘘にしか聞こえないし。嘘だし。
するとじっと私を見ていたコウはニヤリとすると追い討ちをかけるように言った。
「俺を好きだったようには見えなかったけど」
コウの言葉は私に嘘を言わせないようにしている。
…もう。これじゃあ本当の事を言うしかない。
私は「はぁ」と溜息をつくと観念するように言った。
「…家賃の更新と冷蔵庫」
「何それ?」
「去年の夏の賞与がなかったからマンションの更新ができなかったの。しかも冷蔵庫まで壊れて…」
「それで?」
「だから結婚した。コウの家広いし、冷たいビールがあるんだもん」
私は全てを言い終えると気まずくなり顔を下に向けた。
全てを言い切った事でスッキリしたけど、コウがどう思ったか心配だったから。
もしかしたら呆れているかもしれない。いや怒ったかも。
…どうしよう。やっぱり離婚しようって言われたら。
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