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私が下を向いていると頭の上からコウの声が聞こえてきた。
「ふーん。まっミウらしいな」
その声はいつも通りのコウで怒っているように思えない。
私は意外で思わず顔を上げてしまった。
「えっ?…怒ってないの?」
私が顔を上げるとコウは優しい眼差しで私を見ていた。
「怒るわけないだろ。どんな理由であろうとミウと結婚できて嬉しいんだからさ」
「…うん」
「じゃあ帰るか」
コウはそう言うと大きく両腕を上げて伸ばした。
…帰る。
私はその言葉を聞いて無性に寂しくなった。
こうして気持ちが通じ合ったとはいえ、私達は別々の家に住んでいる。
だからこれ以上一緒にいるわけにはいかないし、引き止めるわけにもいかない。
それにまた会える。
だって私達は夫婦なんだから。
「あ…うん。それじゃあ…帰るね」
私は鞄を手にして立ち上がろうとすると、同時にコウに腕をつかまれた。
「何言ってんだよ。俺達の帰る場所はたった一つだろ?」
「あ…」
「さぁ帰ろう俺達の家に」
コウはそう言うと優しく微笑み、私にそっと手を伸ばした。
「…うん」
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