帰る場所

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声に出さない疑問にコウは答えてくれる。 私はそれをただ黙って聞いていた。 「理沙は独立するにあたって俺を執拗に誘っていた。一緒に会社を創ろうって」 「…」 「でも俺は興味ないから何度も断ったんだけど、アイツどうしてもわかってくれなくてさ。迷っているように見えていたんだろうし、俺も世間体を気にして拒絶できなかったのも悪かったんだよな」 「…」 「そしたらアイツ、勝手に上層部に言ったんだよ、俺も辞めるって。これはさすがに参ったよ」 「…」 「上層部に言われた時、俺は逃げ切れようのない状態だった。そんな時だよ、小母さんから結婚のお誘いを思い出したのは」 「…」 「俺はアイツから逃げ出すためには、もう結婚するしかないと思った。だからミウに会う半年前から会社には結婚する事を報告してたんだ」 「…」 「こんな理由で結婚したけど、俺は本当にミウが好きだった。ミウと結婚して本当に幸せだった。それだけは嘘じゃない」 「…コウ」 「ごめんな。俺の勝手な我儘にお前を巻き込んでしまって。軽蔑するよな?」 コウはそう言うと切なそうに私を見た。 …軽蔑? ううん。それはない。 そりゃあ、過去の事を聞いた時に動揺はしたけど、でもそれは私に会う前の事だ。 それに理沙さんの事、私の誤解を解いてくれた。 確かに結婚したのは逃げる為の狡い理由だったかもしれないけど。 でもそんなのどうでもいい。 コウが…私だけを想っていてくれていた。 幸せだったと言ってくれた。 …それだけでいい。 私だって幸せだったし。 私はコウが好きなんだもん。
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