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朝6時。
目を覚ますと、隣のベッドで寝ていた筈の彼女の姿は無かった。
2階の部屋から1階の台所に向かうと、お袋と並んで料理を作っている彼女がいた。
「おはようございます。ベッド占領しちゃってすみませんでした。」
早朝から眩しいくらいの笑顔。
この笑顔見れて良かった…
そして、これからも見れる。
それだけで俺は幸せだと思えた。
「布団に寝るのは久々だったけど、良く寝れたよ。」
「良かったです。鈴音さん、今日はお仕事なんですよね?もう準備はできるのでのんびりしていてください。」
てきぱきと台所の中で動き回る彼女に言われるがまま、俺は取り敢えず洗面所に行って顔を洗う事にした。
「ねぇ、昨日ヤった?」
歯を磨いてる最中、不意に話しかけられた内容に思わず吹き出してしまう。
声の主は彩織。
昔から人をおちょくるのが好きなようで、どんなネタでも平気で口にする。
勿論、周囲の空気は読んでくれているが。
「…おま…ッ、何言ってんだよ。」
「感動の再会っぽかったし~、意識させたからヤったのかな~って思ってさ。」
思い切りむせながら話す俺をよそに、キラキラと眼を輝かせながら更に突っ込む彩織。
「余計なお世話。」
「じゃあ佐倉さんに聞こうかな~。」
「…何もしてねーよ。…頼むから佐倉さんにちょっかい出すのはやめてくれ…。…こういうの慣れてないだろうし。」
うがいをして洗面所を出る時、彩織に釘を刺す様に俺は告げた。
「兄貴がそう言うなら仕方ないなぁ…。育ちのいいお嬢さんっぽいしね…。」
彩織はつまらなさそうな表情ながらも渋々承諾してくれた。
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